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第110話 孤独の影⑥

Penulis: 花柳響
last update Tanggal publikasi: 2026-01-28 06:01:34
 ◇

 廊下に出た征也は、ドアに背中を預けたまま、動けずにいた。

 膝から力が抜け、ずるずると床へ崩れ落ちそうになるのを、歯を食いしばって必死で堪える。

 左手が、小刻みに震えている。

 彼女に触れようとして、拒絶された手だ。

『私の心なんて、これっぽっちも見ていない!』

 莉子の悲痛な叫びが、呪いのように鼓膜にへばりついて離れない。

「……っ、ぐ……」

 喉の奥から、乾いた呻きが漏れた。

 痛い。

 心臓を素手で鷲掴みにされ、握り潰されたようだった。

 彼女の言う通りだ。

 俺は彼女を守るつもりで、結局は彼女の意志を無視し、真実から遠ざけていただけだ。

 「対等なパートナー」ではなく、「守るべき対象」としてしか見ていなかった俺の傲慢さが、彼女を傷つけた。

(……だが、言えない)

 征也は、震える手で顔を覆った。

 あそこで「俺じゃない」「神宮寺がやったんだ」と説明することはできた。

 だが、今の俺にそれを証明する手立てはない。神宮寺蒼は狡猾だ。自分の手を汚さず、すべての痕跡を綺麗に消し去り、俺になすりつけている。

 今、莉子に中途半端な真実を告げても
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